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自治体レベルの補助政策の実際についても説明している。
第6章「ドイツにおける市民セクター活動−社会福祉領域を中心に−」(縣公一郎)では、同国の公益法人について考察する。ドイツでは、市民セクターあるいはNPOといった概念は日本ほど定着しておらず、公益社団、無償公益社団という概念の方が一般的である。本章ではこれらの組織を公益法人の概念で包括し、検討を行う。ドイツの公益法人制度は日本に比べると簡素であり、組織目的に関係なく一元的認可にもとづいており、行政からの直接補助金が活用され、しかも認可と補助金が分離している、これらの諸制度を概説した後、ドイツでもっとも公益法人が活動を展開している社会福祉領域を素材として行政と法人との関係を考察する一ここでは、法人の組織構造、連邦からの援助、州からの援助、市町村からの援助等を概説し、ドイツ同権奉仕会、ドイツ赤十字社の事例を紹介している。
第7章「オーストラリアにおける市民セクター活動一日常と非日常のボランタリズムー」(西尾隆)では、同国のボランティア活動について、ルーティーン状況と緊急対応という条件差による市民活動の違い、日常と非日常のボランタリズムの諸相について、ボランティアと行政との関係に焦点を合わせて検討している。本章では、オーストラリアという国の概況を確認し、ボランタリズムが生成した土壌を考え、州別、年齢別等のボランティア人口をはじめ各種統計からボランティア活動の概要をしめす。そのうえで、「日常におけるボランティア」として、福祉・コミュニティ・市民相談の各分野の事例を紹介し「非日常におけるボランティア」として、緊急管理・防災の各分野の事例を紹介する。さらに、比較的最近関心が高まってきている「ボランティア・マネジメント」の動向を紹介しつつ、上述の理論的関心からまとめを行っている。
以上が本報告書の概要である。全体を通じて、各章ごとに「市民セクター」概念の用法にずれがあるなど、まとまりに欠ける点も散見されるかもしれないが、これは概念の精緻化よりも活動の多様性を明らかにすることに重点を置いた結果である。むしろ、各章は独立した論文集であると考えていただければ幸いである。本報告書が「市民セクター」活動の多様性と行政との連携に潜在する問題点の一端をしめしていれば調査研究の目的はとりあえず達成されたといえよう。

 

 

 

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